「刻」 李 良枝
2017年 08月 27日この本を案内してくれたのは温又柔「台湾生まれ日本語育ち」。
生まれ育った日本とルーツの韓国の狭間で揺れるアイデンティティ。
韓国人としての確固としたアイデンティティをつかもうとする在日韓国人女性が主人公。
日本に産まれ育って韓国を知らないことに苛立ち、
韓国に留学して、韓国語、伽耶琴と韓国舞踊を習うイ・スニ。
韓国での生活に立ちはだかる様々な葛藤。
目覚まし時計の秒針の音が強迫観念を呼び覚ます。
化粧の描写は素顔を隠す仮面の象徴のよう。
〈私は、ずるい。何かをごまかしている〉
〈私の話す言葉は、いつも他人の言葉の引用反復だ〉と煩悶する。
韓国の喧噪など嫌悪しながら、嫌悪する自分を許せない。
「刻」に描かれるソウルは現在のソウルとは別世界。
1984年発表の小説。
私が初めて韓国を訪れたのは1986年。オリンピック開催の前年だった。
まだ新聞や看板には漢字が溢れていた時代。
その時代の日本と韓国の格差も、主人公を苛立たせる要因だったのではと思う。
今日の朝刊の読書の頁に、温又柔氏のコラムがあった。
深く影響を受けた作家の筆頭は、やはり李 良枝という。
次は「由煕 ナビ・タリョン」を読もうと思う。
by lazygardener
| 2017-08-27 08:54
| 本
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